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Chromebookを2年間使った感想

はじめに

2020年にはじめてのChromebookを購入しました。2年ほど使ってみて、私的に良いところと悪いところが見えてきたので、紹介していこうと思います。購入を検討をしている人の参考になれば幸いです。

Chromebookについて

Chromebookは、Googleが開発したChromeOSを搭載したパソコンです。2010年代後半くらいから、年末とか年度末にクドいくらいテレビやYouTubeで広告が出されていたので、名前は聞いたことがある方は多いと思います。

もともと米国では教育現場で採用されるケースが多かったようですが、日本でも2019年からGIGAスクール構想が開始され、全国の生徒たちに1台PCが配備されることになりました。そこでChromebookを導入する自治体が多かったようです。ネットで調べると、GIGAスクール構想で購入されたデバイスでは、ipad OSやwindowsを押さえて、40%を超えるシェアとも言われています。

PC全体では2%くらいのシェアのようですが、Windows、Macに次いで、「第三のOS」とカッコいい新興勢力みたいな通り名まで与えらえれています。三国志で例えるなら、呉でしょうか。

私のPCの使い方

メインPCはLenovoのIdeapad Slim 550、メモリ8GでCPUはRyzen5 5500Uのモデルです。7万円くらいでしたでしょうか。Lenovoのラインアップだと、エントリー・格安扱いのモデルではありますが、スペック的にはスタンダードモデルと言えると思います。

使い方としては、SteamのようなPCゲームはやりませんし、動画編集、画像編集といった、マシンスペックが要求される作業はやりません。もっと言えば、ExcelやWordといったMicrosoft Office製品も使いません。

主な用途は、ChromeでYoutubeを見ることと、趣味でプログラムを書くことくらいです。プログラムも機械学習のようにハードな処理はやらないので、VSCodeが動けば十分です。このPCで十分満足できるくらいサクサク動いています。

私のChromebookに対する評価は、普段PCをこういう使い方をしている人間が行っていものだとご理解いただければと思います。

私のChromebook

評価のベースとなるChromebookは、初代Lenovo IdeaPad Duetです。当時セールで3万円弱で購入しました。Chromebookの中では、当時ではエントリーモデルとスタンダードモデルの中間程度のスペックかと思います。

メモリは当時のChromebookとしては標準的な4Gです。CPUはMediaTek社のHelio P60Tです。格安スマホメーカのミッドレンジ製品に良く搭載されていたCPUですね。PCというより、Androidタブレットみたいだなぁ~と思った記憶があります。

メインのPCはWindowsを持っているので、持ち運び用にChromebookを使っています。よく使うアプリ(VSCode)がIdeaPad Duetのスペックだと厳しいため、自宅ではずっとWindowsを使っているのですが、、、しかし、ゴールデンウィークや年末年始に実家に帰り、数日Chromebookを触っていると、毎回「結構便利だな~~」と感じるのでChromebook自体の印象は良く、可能性はとても感じています。

Chromebookの「ウリ」

良くCMでも宣伝されているように、公式の売り文句は「高速」、「安全」です。後、世間一般には他のPCと比べて「安い」と言われており、Chromebookの利点の一つと言ってよいでしょう。

高速

これは、電源を入れてから「OSの起動が速い」という意味と、chrome等の「アプリの起動が速い」、という両方の意味で使われていると思います。CM等では、どちらかというと前者が強調されている印象です。

OSの起動の速度

試してみたところ、電源ボタンを押してからパスワード入力画面が表示されるまで、約10秒でした。パスワードを入れてからデスクトップが表示されるまでは、約8秒でした。

※ 私のIdeaPad Duetは指紋認証非対応です。Chrome OS自体は指紋認証のサポートはしているようですが、多くのエントリーモデルのChromebookは、指紋認証は搭載していないようです。

一方、メインのWindowsのPCでは、起動からサインインの画面まで約10秒、サインイン画面からデスクトップが表示されるまでは約2秒でした。

Windowsの高速起動が効いているのでしょうか。結果的にはWindowsの圧勝です。しかも指紋認証がついていて、パスワードを入力する手間もないため滅茶苦茶速く感じます。(比較的新しいPCですが、今後アップデートを重ねていった時、同じ速度を維持できるかは未知数ですが、、、)

このせいか、「Chromebookは起動が速い」という印象は残念ながらありません。 ちょっと今のWindowsが速すぎな気がしますが、、、Windows Vistaの時代と比べると、確かに高速起動と言えます。

ただ、Chromebook単体で考えても、遅くてイライラするというレベルではありません。起動時間より、パスワードを入力するほうが鬱陶しく感じます。

アプリの起動速度

「スマホのCPUかよ~~」と疑心暗鬼でしたが、まぁまぁ快適に動きます。ただ、OSの起動直後は少しモッサリしていて、反応しないこともしばしばあります。ほんの少し間を置けばほとんど気になることはありません。

アプリの起動はちょっとラグがあるかな?くらいです。私は気にはなりませんが、人によっては気になるかもしれません。iphoneとかハイエンドのスマホを使っている人なら、遅く感じるような気はします(私のスマホは2万円なので気になりません)。

正直に言うと、手放しに「サクサク動く」と言い切るのは難しい気がします。"価格の割には"、という前提付きになるかなと思います。

数年前のAmazon kindle fire7も、「サクサク動く」というレビューにあふれていましたが、あれも前提付きかと思います。値段を考えずに評価すれば、かなりモッサリしていますよあれは。

逆にポジティブに考えれば、「気になるレベルの遅さはほとんど無い」と言えると思います。

私が今まで使っていたハードのサクサク度を表すと、こんな感じです。発売日も数年ずれていると思うのであまり意味ないかもですが、、、

fire7(2019) < MediaPad T5(2018) <<<< Duet(Chromebook) << Slim(Windows)

ただ、特にアプリの動作の「速さ」は、OSよりマシンスペックに左右される要素が大きいと思います。Chrome OSはWindowsより軽量なのは事実ですが、比較対象のWindowsのPCではメモリは倍の8G積んでいますし、CPUだってHelio P60TとRyzen5 5500Uでは後者のほうが圧倒的に高性能です。単純に「Windows VS Chromebook」という比較にすることはできず、あくまで「IdeaPad Slim VS IdeaPad Duet」の比較として捉えていただければと思います。

安全

Chromebookは製品ごとに自動更新期限が決まっています。Auto Update Expiration(AUE)と呼ばれているやつです。自動更新期間中は、Googleによるソフトウェアの自動更新が適用されます。発売から7~8年が適用期間の目安と言われているので、よほど古いモデルを購入しない限り、かなり長い間更新を受けることが可能です。そういう意味では、安全と言えると思います。購入前に製品ページでAUEを確認しておくと良いでしょう。

後、あまりこういう考え方は良くないと思いますが、OSシェアが低いことから、攻撃の対象になりにくく、相対的に安全なOSと言うことも出来るかもしれません。もっとも、そういう隙をついた攻撃が出ることもあり得るかと思うので、あくまでここは素人の考えということでお願いいたします。

安い

これはどうでしょう。2年前、私がChromebookを購入した際には1万円~4万円代が相場だった気がします。メモリは4Gが普通で、CPUは格安のAndroidタブレットに搭載されているような(?)あまり聞いたことがないやつでした。そして、当時はGoogle Driveなどのオンラインサービスを標準利用させることでローカルのストレージをほとんど必要としない、というのが売りでしたので、ストレージは32Gあれば良い方だったと記憶しています。とにかく、ハードのマシンスペックはほとんど求めないOS、という印象が強かったです。

2023年現在、Amazonを見てみると3万円~5万円くらいが相場でしょうか。メモリ8Gも一般的になりましたし、IntelのPentiumやCore-iシリーズを搭載したモデルも結構見かけます。後、8万円を超えるようなハイスペックなモデルもちょくちょく出てくるようになりました。

当時と現在では、コロナ危機、半導体不足、世界的なインフレ、円安、エネルギー価格の高騰、、、、と世界情勢は激変しています。そのため、単純な比較は困難ですが、現在でも今の私のWindows PCと同スペックのモデルが7万円前後で購入できることを考えると、Chromebookの価格は上がってきていると言えると思います。少なくとも、Windowsとの価格差は縮まっているのは間違いありません。

これはユーザからの要望にGoogle、ソフトウェア開発者、メーカーが誠実に応じた結果とも言えるので、Chromebookの普及とともに、健全に成長してきていると前向きに捉えることもできると思います。ただ、当初の「ブラウザが動けば十分」という主な利用者層にとって、価格上昇は受け入れ難い部分もあるかもしれません。

私個人も、「後1~2万円余分に払えばもっと良いスペックのWindows PCが買えてしまう」という価格帯は、かなり不利な状況かと思います。3万円台で購入できる無印ipad(最新の第10世代は7万円近くするようですが、、、)が、同価格帯のAndroidタブレットを駆逐してしまったことを連想させます。

ChromebookはWindowsと比べれば絶対的な台数が少ないので、ボリュームディスカウント的なものが効かず、価格転嫁がされやすい、という特徴もあるのかもしれません。もしそうならば、かなり不利なタイミングでの評価になってしまいますね。グローバルな部品の調達や、生産技術に関しては全くの無知なので、ただの推測ですが。

良いところ

既にほとんどの方が言うように、ブラウザでのネット閲覧や、Google Driveの操作や、基本的なファイル操作は特に気になるところはありません。ここでは、私が個人的に「おお!」と感じたところを紹介したいと思います。

Linuxが動く

Linuxが動きます。いろいろインストールして無理やり動かすのではなく、「設定」から簡単に有効にできます。ちょっと前までLinuxを使おうと思ったら、USBにイメージを入れて古いPCに入れるか、サーバをレンタルしたりする必要がありました。 仕事で触れる機会でも無い限り、個人レベルでの利用は、よほどPC好きの方でもない限り、ハードルが高い印象がありました。この気軽さは便利です。

とは言え、今ではWindowsでもコマンド一発でubuntuがインストールできる時代です。単にLinuxが動くだけではさほど大きな利点にはなりません。

では、ChromebookでLinuxが動く何が便利なのか。

WindowsやMacでは、様々なサード・パーティ製ソフトウェアをインストールして利用することが出来ますが、Chromebook用のソフトウェアはほとんど作成されていません。 ただ、Linuxが動けば、Linux用ソフトウェアのインストールが可能になります

例えば、ChromebookにNode.jsのインストールは出来ませんが、Linuxでは可能です。VSCodeもLinux版があるので、利用可能になります。 Linuxを有効にすることで、Chromebookでちょっとした開発環境を構築することが出来てしまうのです。

create-react-appでReactを入れてvscodeで少しコードを書いてみた時の画像です。ただ、メモリ4Gでは厳しいのか、すぐ固まるので使用は諦めてしまいした。 vscode

重たいフレームワークを使ってIDEでゴリゴリ書いていくのは、低スペックの端末だと厳しいかもしれません。ここはスペックを上げたらどうなるか試してみたいところです。 ただ、通常のテキストエディタもプリインされており、簡易的なスクリプトを書く分には特に問題ありません。

私のChromebookにもGit,Python,Node.js,goがインストールされています。はじめて作った仮想通貨の取引botは、ベースはGWに帰省中にChromebookで作成しています。

後、Linuxを有効にしてGoogle Driveをマウントさせておけば、Linuxのターミナルからだけでなく、「ファイル」アプリからも直接Google Driveのファイルを操作が出来るので なかなか便利です。

Google社も、今後Chromebookでの開発環境を強化していく方針のようです。ただ、ハードウェアのスペック要求が上がってしまうと、本来のChromebookらしさがスポイルされてしまう気もするので、塩梅が難しいと思いますが、楽しみですね。

Androidアプリが動く

なんとGoogle Playストアがプリインされており、Androidアプリを動かせます。話が逸れますが、WindowsでもWindows11からAndroidアプリが動くようです。すごい世の中です。

上述のように、Chrome OS用のソフトウェアはほぼ作られていません。Google社も、ChromebookでのアプリのインストールはGoogle Playストアを使ってAndoroidアプリを入れるように案内しているようです。基本、必要な機能はAndroidアプリで補完して下さいとのことなのでしょう。

ただ、何でもインストールできる訳ではありません。Google PodCastを入れようとしたら、「お使いのデバイスでは利用できません」と表示され入れられませんでした。 後、一般的なChromebookだとAndroidスマートフォンのハイエンド機よりスペックが低いため、スペック要求が高いゲームとかは厳しいと思います。

AbemaTVとか、kindleやPrime Videoは快適に使えています。

※ kindleの青空文庫で、フランツ・カフカの「変身」を読んで文化人ぶっているところです。 kindle

1つ残念だったのは、Youtubeのアプリが動画を再生すると固まってしまい、使い物にならないことです。これはChromebook全般がそうなのか、IdeaPad Duet固有の事象なのかは不明です。まぁ、ブラウザでも操作感はさほど変わらないので気にしてはいません。

後、一部のアプリはタブレットサイズの画面に対応していません。2chのまとめのアプリを開いたら、こんな感じで表示されこれ以上横に広げることが出来ません。

ng-app

とはいえ、Google PlayストアからAndroidアプリが入れらるのは便利です。Windowsだと、Amazon Appstoreからのダウンロードとなるので、Google Playストアと比べるとアプリの数は圧倒的に少ないです。ここは明らかにChromebookに利があります。

悪いところ

Windowsでいうところのデスクトップ画面、スマホで言うところのホーム画面に、アプリやファイルのショートカットとかを置くことが出来ません。

home

Chromebookのホーム画面は壁紙を楽しむだけのようです。

「そんなことある!?」と思って調べましたが、方法は見つけられませんでした。良く使うアプリは基本、下のタスクバー(Chromebookでは「シェルフ」と言います)に配置して使うしかありません。

全てのアプリは、左下の●をクリックすると表示されます。Androidのドロワーみたいですね。

apps

iPhoneのようにアプリが全てホーム画面に並んでしまうのも困りますが、ホーム画面に何もおけないのはちょっと寂しいです。確かに、Windowsやスマホでも、不要なファイルやアプリがデスクトップにズラーっと並んでしまうタイプなので、いっそ何も置けない方が整理しやすいのかもしれませんが、、、Androidアプリのウィジェットとかを配置できれば楽しそうなのに。

後、以前はスワイプ操作でドロワーの表示ができたのですが、いつからかのバージョンアップで出来なくなってしまいました。設定を変えればまた出来るようになるかと思いましたが、ダメなようです。

Chromebookがお勧めな人

3万円のChromebookでは、プログラミングとかゲームとかをゴリゴリやるのは厳しいですが、ブラウザでの操作や、GoogleフォトやGoogle SpreadSheet、Google Drive等のプリインされているGoogle製アプリの操作は問題なく使用できます。

「ブラウザがあれば十分」というライトユーザなら、これで十分だと思います。ただ、デスクトップ版のMicrosoft Officeが必須な人は、厳しいかもしれません。Google SpreadSheet等でExcel互換形式で保存することも出来ますが、特に仕事で使う場合は止めておいたほうが良いでしょう。

後、Androidアプリも動かせるので、Androidタブレットを探している方にもお勧めしたいです。Chromebookの多くはタッチパネルですし、360度回転するタイプや、IdeaPad Duetのように2-in-1でキーボードを外せるタイプもあります。Chrome OSはちゃんと「タブレットモード」も搭載しているので、タブレットとしても快適に使えます。キーボードがあることで、タブレットと比べると入力作業は圧倒的に楽になり、表計算や文書作成等、出来ることも格段に広がります。もはやタブレット界で影が薄くなってしまったAndroidタブレットを購入するより、格安のChromebookを求めた方が満足度は高いと思います。

最後に

2022年は、ChromebookのCMはほとんど見かけなくなってしまいました。販売台数もかなり減ってしまったようです。これはおそらく、これまでの積極的な宣伝で、「お手頃値段で最低限の機能があるデバイス」を求めるユーザには一通り1台行き渡り、マスに向けた宣伝は効果が薄くなったということだと思います。今後は、今までのChromebookの販売ターゲット層ではなかった、新しいユーザ層獲得のために新たな戦略を掲げてくるのではないでしょうか。

現にGoogle社は、開発者向け機能や、Steam対応等に力を入れていくことに言及しています。今後はアプリやWebサービスの開発者やPCゲームのユーザ等を取り組んでいく方針なのかもしれませんね。

他方で、2022年夏ごろに、既存のPCやMacにインストール可能なChromeOS Flexが公開されました。もしかすると、今後のChromebookは価格もあがっていき、WindowsやMacと機能面でも正面衝突するようになり、従来の「コストパフォーマンスの良いChromebook」は、自分で古いデバイスにインストールする使いに方になるのかもしれません。

いずれにしても、長く続いた「Windows VS Mac」の二強時代に一石を投じたChromebookです。今後どういう方向に成長し、シェアに割り込んでいくか楽しみですね。

もっとIdeaPad Duetのハード面についても触れたかったのですが、ちょっと語りすぎてしまいましたので、また別の機会にしたいと思います。

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